ニュ-ヨークやサンフランシスコ、シアトル等、アメリカに在住している日本人は数多くいます。

そして、日本にいる父が亡くなり、相続人は日本在住の母と妹、そしてアメリカ在住の兄、というようなケースがあります。

このような場合に、父名義の銀行預金や不動産の相続手続をするためには、どうしたらよいですか?という質問を受けることがあります。

この場合ですが、まず、遺言の有無を確認します。

遺言書があれば、原則的には遺言書の記載が優先します。

一方、被相続人である父が遺言書を作成していない場合、遺産分割協議書の作成が必要となり、作成した遺産分割協議書の内容に沿って遺産分割がなされます。

そして、遺産分割協議書には、相続人全員の署名と実印による押印をし、印鑑証明書を添付する必要があります。

ここで、全員が日本在住の場合、印鑑証明書を添付することは特に難しくありません。

しかし、アメリカ在住の日本人の相続人は、日本国内に住所がないため、印鑑登録ができませんから、印鑑証明書を提出できません。

では、このような場合、どうしたらいいのでしょうか?

この場合、印鑑証明書に代えて、「署名証明書」というものが必要となります。

大きく分けて、アメリカ在住の日本人が印鑑証明書の代わりに署名証明書を取得する方法は下記の3通りあります。

①アメリカ国内の日本大使館又は日本領事館で領事から署名証明書を取得する
②アメリカ国内の公証人役場で、公証人から署名証明書への認証を受ける
③日本の公証人役場にて、遺産分割協議書に署名し、公証人の署名認証を受ける

実務的には、アメリカ在住の日本人が遺産分割協議のために来日している場合は③、それ以外は①か②となります。

「なーんだ、だったら大して大変じゃないじゃん!」と思うかもしれませんが、アメリカの広さをなめてはいけません。
実際には、広大な国土のアメリカは物理的に住んでいる近くに大使館や領事館がない場合も多く、近くに公証人がいない場合もあり、思いのほか労力がかかる場合も少なくありません。

また、銀行預金の相続の場合で、アメリカ在住の日本人が相続財産を受け取る場合はややこしいです。

この場合、海外送金は受け付けないという金融機関もあります。

また、日本の銀行口座があり、そこに送金するとしても送金先が「非居住者用口座」になりますので、海外送金扱いとみなされ、余分な資料が必要となることもあります。

その他、父と子供がアメリカの不動産を共同名義で所有していたり(ジョイントテナンシー JOINT TENANCY)、父がアメリカの銀行口座預金やアメリカの証券会社に株式や投資信託等を残して亡くなったような場合はさらに遺産相続手続きはさらに複雑になります。

このように、日本人であっても相続人の一部の方がアメリカなどの海外に在住している場合、日本在住の日本人のみが相続人となる普通の相続手続とは違う手続きが必要となりますので、国際相続を専門とする事務所にご相談されつつすすめることをおすすめいたします。

当事務所では、15年以上にわたり、難易度の高い国際相続案件を多数こなしてきておりますので、相続人の一部の方がアメリカなどの海外に在住している場合等の相続手続きのサポートが可能な国内有数の事務所であると言えます。

国際相続でお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。