外国人の相続放棄手続きの必要性
近年、外国人の日本への定住化に伴い、外国人の相続の事案が増えています。
外国人の相続においては、財産を相続する場合、日本の不動産の相続手続き、日本の銀行預金の他、海外の銀行口座の相続手続きや海外のファンド、海外の積立保険の相続手続き等、多種多様な手続きが必要となります。
一方で、被相続人に借金がある、あるいは日本に住んでいないから財産の管理が煩わしい等の理由で、相続を放棄するケースもあります。
そこで、今回は外国人の相続放棄の手続き、方法について解説します。
外国人の相続放棄の裁判管轄
外国人の相続のケースでは、まず、どこの国の裁判所で相続手続を行うことができるのかという、国際裁判管轄が問題となります。
日本の法律によると、相続放棄に関しては、被相続人(亡くなった人)の最後の住所や居所が日本国内にあった場合にのみ、日本の裁判所に管轄権が認められるのが原則です(家事事件手続法3条の11第1項)。
つまり、被相続人が外国人であっても、当該外国人が日本在住であれば、相続人の国籍や居住地に関係なく、日本の裁判所に相続放棄の裁判管轄が認められます。
一方で、被相続人が海外居住者である場合には、日本人であっても外国人であっても日本の裁判所に相続放棄を申し立てることは認められないのが原則です。
もっとも、それではあまりに不都合な場合もあることから、被相続人の居住国で相続放棄の法制度がなく、日本で相続放棄の効果を得る必要性が高いと認められる特別な事情がある場合には、例外的な措置として緊急管轄が認められることがあります。
この緊急管轄とは、日本の裁判所に管轄権が認められない場合であっても,外国での裁判手続が法律上又は事実上の原因により著しく困難であるときは,原告(申立人)を権利保護の途絶から救済するために,我が国の裁判所の管轄権を認めることをいいます。
したがって、海外居住者が被相続人のケースで相続放棄を行いたい場合には、まずは上記の緊急管轄が認められるかどうかの検討が必要です。
外国人の相続放棄の条件とは
では、被相続人の外国人が日本に居住してそのまま亡くなっており、当該外国人について日本の裁判所の管轄が認められる場合、当然に日本の相続法を適用して相続放棄ができるでしょうか?
この点については、まず、日本の法律である「法の適用に関する通則法」は、相続については被相続人の本国法を適用する(同法36条)と定めています。
したがって、例えば被相続人がアメリカ人の場合は、その本国法である米国法が適用されることが原則です。ただし、例外はあり、その本国法である外国法が「相続については被相続人の居住地法を適用する」と定めているような場合、日本法が適用されることになります(これを反致といいます)。そこで、外国法で反致についての規定があるかの調査が必要となります。
海外居住の元日本人である外国人のの相続放棄手続き・方法について
では、生まれた時から外国人であった方の相続放棄手続きではなく、アメリカ国籍等外国の国籍を取得して海外に居住する元日本人の方が日本で相続放棄をするパターンの場合、どのような手続となるでしょうか?
この点、日本国籍を持っている人が外国籍を自分の意思で申請して取得した時には、国籍法第11条1項の「日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。」という規定により、法律上は外国籍を取得した時点で、「自動的に」日本国籍を喪失します。
ただ、相続人が日本国籍を喪失し、外国人となっている場合でも、裁判管轄や裁判所での相続放棄の手続は相続人が日本在住の日本人の場合と違いはありません。
もっとも、日本国籍を喪失した元日本人は戸籍から除籍されるため、戸籍のみでは相続人でることを証明できませんので、宣誓供述書(AFFIDAVIT)などの書類を別途用意することにより相続関係を証明する必要があります。
外国人の相続放棄手続き・方法についてのまとめ
上記のように、外国人の相続放棄の場合、国際裁判管轄はどこなのか、適用される法律はどの国の法律かの問題、その他実際の相続放棄の手続きについての必要害類の内容など、被相続人と相続人全部が日本居住の日本人の場合とは異なり、事案ごとに様々な複雑な問題が生じます。 そのため、相続人が自分で手続きを進めていくことが困難なケースが多くなります。
でも、ご安心ください。
当事務所は外国人の相続放棄に精通した司法書士、弁護士等の国際業務に強い専門家とともに、外国人の相続放棄をサポートいたします。
外国人の相続放棄でお困りの方はどうぞお気軽にご相談ください。