香港の生命保険とは
香港にも日本同様、生命保険が販売されています。香港の生命保険は日本の生命保険とはやや異なり、元本確保型の投資ファンドや定期預金のような要素が強く、それに保険契約がついているようなイメージです。
ケースとしては、日本人の香港駐在員が、香港の子会社に出向する等、香港で働いている間に、転勤のチャンスを生かしてHSBC香港銀行等で生命保険を購入することが多いようです。
HSBC香港の生命保険受取手続
では、実際に例えばHSBC香港で生命保険を契約し、日本で契約者が死亡した場合、どのような手続きとなるのでしょうか?
まず、HSBC香港に銀行預金、株式、ファンド等を残して死亡し、相続が発生した場合、裁判所を通じた相続手続(プロベート手続き)が必要となります。
一方、香港の銀行預金等とは異なり、香港の生命保険は相続財産ではないという扱いをされています。そのため、保険会社に払戻請求のために香港でのプロベートは必要ないのが原則です。
しかし、例外はあります。例えば上記の香港駐在員が、HSBCで保険契約をする際に、うっかりしていて保険金の受取人を指定していない場合、その保険契約や死亡保険金は、死亡した人の相続財産の一部になります。つまり、HSBC香港から保険金の払い戻しを受けるためには、生命保険金の請求を直接行うことはできず、保険金の香港でのプロベートが必要になってしまいます。
こうなると、香港の弁護士費用その他で最低100万円以上の出費が必要となり、かつ生命保険金を受け取るのは1年以上先になります。
その結果、相続税の期限のほうがプロベート手続き完了より先に来てしまい、納税資金を確保するために別のところから資金を捻出する必要が生じたり、日本の遺産分割協議が遅れたりする結果になってしまいます。
香港の生命保険の受取人の指定忘れが起こる理由
この点、日本で生命保険の契約をする場合、ほぼ100%に近い方が生命保険の受取人を指定します。
ですので、「なぜ生命保険の受取人を指定しないの?そもそもそんなことってあるの?」と思うかもしれません。
しかし、生命保険の販売代理店や金融機関の担当者が相続が起こった場合のことまで考えて細かい説明をしてくれるかは担当者次第です。
また、香港駐在員の方は、「自分が死亡するのはずいぶん先の話だろう」と思っているケースが多く、遺族への保障を目的とする生命保険としての機能よりも、高利回りの投資商品としての機能に着目して購入しているケースが多いです。そのため受取人の指定については、それほど重要なこととは考えておらず、忘れてしまうことも少なくないようです。
このような事情から、日本人の駐在員が香港の生命保険を契約する場合、受取人を指定していないことは意外とあるとお考え下さい。
総括
以上をまとめますと、
①HSBCとの生命保険契約書の中で生命保険の受取人を指定してあればプロベートは不要
ですが、
② HSBCとの生命保険契約書の中で生命保険の受取人の指定が無ければプロベートが必要になる
ということになります。
そして、プロベートが必要になると、香港の弁護士を雇って通常1年以上かけて香港の裁判所を通じた手続きが必要となり、費用、時間が大幅にかかります。
ですので、香港の生命保険契約をする際は、万が一のことを考え、生命保険の受取人を必ず指定するようにしてください。
当事務所のサービス
なお、当事務所では、HSBC香港で生命保険契約をした場合の死亡保険金の請求代行サポートを行っております。
香港の生命保険の請求に必要な英文書類の作成や、翻訳、認証等を一括してサポートしておりますので、HSBC香港の死亡保険金の請求でお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。